ある山に犀川という大きな川があった。
その山に弥平と千代と言う親子が暮らしていた。
数年前に水害があり、千代の母は亡くなっていた。
ある日千代は病に倒れ、
「あの日母が作ってくれた小豆まんまが食べたい」
と言った。
しかし弥平の家は貧しく、
米も小豆もなかった。
千代の病は一向に良くならなかった。
仕方なく弥平は庄屋の家に盗みに入り、
小豆まんまを作り千代に食べさせた。
程なく千代は回復した。
昼は毬をついて、
「小豆まんま食べた~」
と歌えるほど良くなった。
その夜、
また犀川に洪水が訪れそうになっていた。
村人たちは人柱を立てようとし、
咎人を探していた。
役人が弥平を連れに来た。
「大丈夫だ。すぐ帰るからな」
そう言って帰ってこなかった。
その日から千代は一人きりになり、
何も喋らなくなった。
程なく何処かへ行ってしまった。
数年後、
猟師が雉を撃った。
そこに少女が現れ、
「雉も鳴かずば撃たれまいに」
と言った。
「千代!」
少女は雉を連れてどこかに消えてしまった。
おわり